2024年の5月のゴールデンウイークに、韓国のソウルに一人旅をした。
わたしの旅は、いつも行き当たりばったり。本屋で旅行コーナーに行って、旅行本をパラパラめくる。日本から比較的近場の国で楽しそうなところに目星を付ける。近場と考えると、旅先は、当然、東南アジアとなる。東南アジアでは、同じアジア人であるわたしは黙っていれば溶け込めるし、物価もお安いし、フライト時間も時差も短く、食べ物も口に合い、そうそう、何といってもフルーツが美味しいしお安い。もう、ほんと、魅力が満載!
しかし、韓国のソウルとなると、話はちょっとというか、大分変わってくる。物価は今は為替の影響もあり、日本より若干高い。タイや台湾は親日と言われるが、韓国はもちろん、そうではない・・・。
しかし、SNSの世界では、お互い悪口ばかり言っているような気はするものの、韓国に旅行に行って韓国の悪口を言う日本人に、わたしはお目に掛かったことがない。むしろ、「2年間くらい住みたい」とか「あれこれ優しくされて嬉しかった」、「韓国人男性、すごく、かっこいい」、「ご飯が美味しい」、「化粧品を二つ買うと一つ無料で付いてくる!お得!」などなど、誉め言葉しか耳に入って来ない。
だから、結局、何も身構えることなく、韓国に旅立つことができた。
宿は、明洞にある、ゲストハウスの個室にした。わたしは、宿は、個室で、バス・トイレ(できればバスタブ付きで)があり、エアコン、ベッド、Wi-Fiが完備していて、立地が良ければ、安ければ安いほど良いと思うタイプである。
一泊6,000円の、明洞の宿は、立地は最高だったが、受付には誰もおらず、部屋の鍵が受付台に置かれてあるだけ。Wi-Fiのパスワードも、受付台の小さなホワイトボードに赤いマジックで手書きされていた。簡素な朝食付き、ということだったが、受付台にカップヌードルが1個(!)置かれてあるだけだった。
しかし、受付台には誰もいないということは、ひとり分の料金で複数名で泊まれるということだ。部屋は6畳くらいの広さだったが、寝袋があれば、3、4人は眠れそう・・・だめだめ、悪いことを考えては、わたしったら!
ソウルに到着初日から、わたしは困難に見舞われる。まず、韓国のコンセントの形状が日本のものとは違い、スマホの充電ができないことに気が付いたのだ。タイや台湾、ベトナムでも、コンセントの形状は違うけれど、日本のコンセントも差し込め使用できたので、うっかりしていた。わたしは明洞の宿から飛び出し、近くにあった小さな電気屋に飛び込んだ。
「うちは電気屋だからね、変換プラグなんて、売っていないんだよ。でも、待って。昔、仕入れたものが残っているかもしれない」
と、(グーグル翻訳機通して)痩せて、日焼けして、作業着を着たアジョッシ(オジサン)は言った。彼が、10分間ほど、あちこちの棚を開けて周り、古ぼけた茶色の小さな箱を取り出し、中から黒い変換プラグが現れた時、わたしは安堵のあまり、身体が崩れ落ちそうになった。
アジョッシは、わたしが持っていたスマホと充電器と、その変換プラグを繋げて通電することを確かめた後、はい、という風にわたしに渡した。
「おいくらですか?」
と、尋ねると、ちょっと驚いた表情をしたが、
「うーん、じゃあ、8,000ウオン」
と、答えた。8,000ウオンというのは、日本円で約880円である。わたしは、その値段にとても感動した。というのは、一見の外国人が困っているシチュエーションであれば、法外な値段を吹っかけてくる人など、いくらでもいるのを嫌というほど知っているからだ。わたしは、アジョッシに、カムサハムニダ、カムサハムニダ、と、何度もお礼を言って、宿に戻った。
Wi-Fiは、わたしの部屋の番号ではつながらず、同じ階の他の部屋番号で何度かトライしてやっと繋がった。Wi-Fiのパスワード文字も癖があって読みにくく、受付に書いてあった電話番号に電話して確認したが、それでもうまくいかず、廊下ですれ違った韓国人の女の子に教えてもらって、事なきを得たのだった。
地下鉄のチケットを買おうとしても、韓国の地名と英語は、わたしの頭の中ではつながりにくく、かといって、ハングルが読めるわけでもなく、発券機の前でもたもたしていたら、若い韓国人女性が英語で説明してくれ、チケットカードの精算方法まで詳しく教えてくれた。
「Could I help you?(お手伝いしてもいいですか?)」
と、年上のわたしの顔を潰さないよう、配慮してくれながら・・・。説明を受けた後、わたしがお礼の深いお辞儀をすると、彼女も深々としたお辞儀を返してくれた。
旅をすれば、必ず、他人が助けてくれ、そのありがたみが身に染みる場面で、心が溢れかえる。
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