パリで憂鬱に感じることは、やはり、物価が高いこと(特に外食費)と公衆トイレが少なくて有料であること、スリ集団がいること、何より価値観が日本と微妙にずれていることだろう。
わたしは、パリのピガールにあるホテルにチェックインした時、
「マダム、一泊の宿泊税、8.5ユーロ(約1,360円)が別途、掛かります」
と、言われ、10日分の宿泊税をもちろん支払いはしたが、日本人の感覚だと、最初から宿泊費に上乗せしておくべきではないのか、とちょっとイラっとした。わたしのように宿泊税のことを知らず、ギリギリの予算で観光に来た外国人の学生などには、大打撃ではなかろうか。
中でも、パリの外食費は高い。
カフェで食事をすれば、例えば簡素なサンドイッチとコーヒーでも、2~3,000円は掛かる。レストランで美味しい料理をいただけば、5~8,000円くらいかかるが、お金の問題がなければ、レストランで食事をする方が満足度は高いと思う。
これは思い出だから後悔はしていないが、シャンゼリゼ大通りのヴィトン本店の隣にある、カフェ・フーケでいただいた、フォアグラ(40ユーロ)とサラダ(40ユーロ)、コーヒー(13ユーロ)、水、チップの合計108ユーロのランチには、オーダーする時から少し頭がクラクラした。
『フーケ』はシャンゼリゼの大通りのシンボルといっても過言ではないほど有名なカフェ。
映画「凱旋門」の中での「戦争が終わったら『フーケ』で会おう」というセリフでも有名らしい。しかし、戦争が終わったばかりの豊かでない時に、『フーケ』で会おう、という気分になるだろうか、などと、メニュー表の金額を見ながらわたしは考えた。
ま、そんな貧乏くさい、わたしの所感はさて置き、『フーケ』の内装はアンティーク調でシックで美しく、若くてイケメンのウエイターさんたちにフォアグラの食べ方を教わったり、「わたしは牛ではありません」と言いたくなるような、カリカリのフランスパンとチーズ、ハムが掛かった大量のサラダが出てきて驚いている時も、そのウエイターさんのひとりが「一緒に食べていいですか?」と笑いながら一瞬、正面の席に座ってくれたり、まさにアラカン女性のディズニーランドという感じだった。(残った大量のサラダはテイクアウトさせていただきました)
また、公衆トイレの使用料が1.5ユーロから2.5ユーロも掛かり、わたしはカフェやレストランではもちろん、美術館や教会、デパート、パリ市庁舎、時には法務省などの役所に入って、無料のトイレを借りていた。
スリについては、わたしが遭遇しそうになったのは、チャリティの形で署名させ、その後しつこく20ユーロほどの寄付を強要してくるという類のもの。わたしは、事前にネットでからくりを知っていたので、二回とも完全に無視し、「Excuse me!」と苛立たしそうに言われた時、同じ口調で「Excuse me!」と言い返した。地下鉄で、スマホを見ながらキョロキョロしている若い男女たちとは必ず3秒ほど目を合わせ、「わたしはあなたたちの存在を知っていますよ」と知らせるようにしていた。(この方法はリスキーな面も否めず、お勧めしているわけではありません)
電車のホームで「スリにお気を付けください」と各国の、日本語の放送も流れたりし、それなら、警察官を配置するとか、スリの子どもたちを保護して教育を受けたり仕事に就いたりできる機会を与えるとか、抜本的に何とかすべきよ、と思うが、陸続きの国では、その辺りは難しい面があるのかもしれない。(もし、日本で、電車のホームで「スリにお気を付けください」とアナウンスが流れたら、日本の何かが壊れた感じがするのではなかろうか)
また、ベルギーのブリュッセルに二泊三日で旅行しようと思い立ち、
「ハンガリー政府がベルギー政府と移民問題で揉め、昨日、ハンガリー政府が大量の移民をブリュッセルに強制移送した、とネット記事で読みましたが、本当ですか?今、ブリュッセルの治安は悪いのですか?」
と、ホールでホテルの若いマネージャーに尋ねた時、
「マダム、わたしは昨晩はぐっすり寝ていて、ニュースをまだ読んでいないのですよ」
と、肩の高さで両手を合わせ、その上に頬を傾け、笑顔で目を閉じた時、わたしはハリセンで彼をはたきたい衝動に駆られた。マナーにはこだわるくせに、他人の込み入った質問には面倒と言わんばかりに笑顔でかわす。もちろん、フランス人が全員、彼と同じ対応をするとは思っていないけれど・・・。(少なくとも、ホテルの、夜間担当のムッシューは違う)
そして、わたしが滞在したピガールのホテルでは、風呂場の窓に薄いガーゼのようなカーテンが掛かっているだけで、つまり、ホテルの窓からの、様々な体型であろう客の裸の影も、ピガールの街の色どりとなるよう仕掛けられていた。それが、このホテルの歴史だとしても、四つ星ホテルが、未だに、こんなことを客に強いていることが腹立たしかった。わたしは、部屋を真っ暗にしたまま、月明かりの中、不貞腐れて風呂に入っていた。
だけど、それも、どれも、今思い出すと、感慨深い。
コメント
人生ってお金で買えない!
だから目的を持って生きることが大切!
私も夢のような目的あり仕事一途
ナサオさん、
コメントをありがとうございます!
わたしも、ナサオさんと同じく、夢のような目的のため、今はほとんどの時間を仕事に費やしています。
お互い、夢を実現させましょうね。
アラカン女性のディズニーランドが笑えました!
eigotto
eigottoさん、
いつもありがとうございます、感謝しています。
ディズニーランド・パリも行ったのですが…。
シャンゼリゼ大通りのカフェ・フーケの方が、アラカン女性のわたしには、遥かに楽しかったです。(笑)