中古本を買うということ|静かな読書の楽しみ

エッセイ

 近所の図書館が、閉まっていた。

 建て替えのためだという。

 行き場のなくなった時間が、手の中に残った。

 しかし、街中の、古くて小さな図書館が、どんなふうに建て替わるのか楽しみである。

 潤沢な本棚、映画室、音楽室。

 そして、居心地のいい自習室。

 図書館に、勝手に夢が膨らんでいく。

 でも、しばらくは、中古本を買わなきゃね。

 退職して、使えるお金はうんと減り、欲しいものも消えつつある。わたしにとって、ネットで中古本を買うことは、ろ過されて、残った愉悦。

 映画館に行かなくなった代わりに、本を開く。

 本なら、公園でも、カフェでも読めるし。数日に分けてもいいし、読み終えた達成感も得られる。

 中古本からは、昭和の電気代請求票や知人からのハガキ、読書メーターのような書き込み、など、出てくることもある。個人的なものはすぐに処分するが、古いもの、本への書き込みは眺めたり、参考にすることもある。

 最近、図書館で除籍になった本を、千円で購入した。絶版になっていて、新書は買えなくなっていた。

 貸出カードを入れるポケットや○○図書館というシールやスタンプが押されていて、上から「除籍」シールが貼られている。

 まあ、お世辞にもきれいな本ではないが、半透明の薄紙でカバーされ、手作りの栞が付いていた。

 途端に中古本が贈り物めいて、ページをめくる指先が軽くなった。

 手心の力って、あなどれない。

 

 古本の世界を、そっと覗かせてくれる本でした。

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