フランスのパリに行ってきました⑪~ヴェルサイユ宮殿には日本人ツアーで~

エッセイ

 今回の、わたしのパリ旅行の大きな目的は、ヴェルサイユ宮殿とムーランルージュのショーを観ることだった。

 ヴェルサイユ宮殿はパリの中心部から20キロメートルほど離れたところにあるので、日本人ツアーに参加した。チケットも用意してもらえ、行きも帰りもツアーバスに乗れて楽だった。

 パリにロングステイし、時間に余裕のある方は、一度くらい現地日本人ツアーに参加するのも悪くないと思う。日本人のガイドさんがバスから見える景色やフランスの歴史、もちろん、ヴェルサイユ宮殿でもこと細かく説明してくれて、楽をしながら美しいものを見て知識が満たされる。せっかくヴェルサイユ宮殿に行くのだから十分な下調べをして行くべき、という意見もあるだろうけれど、茨の人生を歩んできたわたしにとって(自分で言うな!って?)、怠惰という時間はこの上なく愛しい必需品である。(ちょっと山田詠美風に表現しました)

 たまたまだけれど、ツアーで一緒になった日本人の中にはアメリカやヨーロッパで働き続けてリタイアされた方や、有名ブランド店やクルーズ船で働いていた方もいらっしゃり、バスの中でも興味深い話を聞くことができた。こういう時、世界って広いなあ、輝いているなあ、と思う。

 ヴェルサイユ宮殿の部屋に飾られている、大きな肖像画の中では、ルイ14世がヒールのある赤い靴を履いていたのが、個人的にはシュールで面白かった。

 この赤い色の靴というのは、当時、ルイ14世以外のものは履くことを許されず、遠くからでも国王の位置を知らしめることができたようだ。(ちなみにルイ14世の身長は180センチを超えていて、当時、ずば抜けて身長が高かったらしい。クラシックバレエの創始者だということも、この靴から何となく感じ取れる気がする)

 また、絵の中の両脇の大理石の柱と、同じ色の大理石の柱をその絵の横に配置したり。(この赤い大理石はすごく高価だったらしい。やはり、突き抜けていますな)

あの有名な鏡の間では、ルイ14世が、圧巻に並ぶシャンデリアにローソクを灯し、窓からローソクの明かりを溢れさせ、自分が「太陽王」であることを知らしめたかったのだが、実際は煤で美しい天井の絵が汚れてしまうため、その目論見はうまくいかなかったようだ。

 饗応の間では、天井に狩の女神が描かれていて、車を牽いているのは「狼」であった。当時のフランスはライオンの存在を知らず、動物で一番強い狼を描いたということだった。そして、その場で食事が始まると、どんな理由でも席を立つことは許されなかったという。

 そして、マリー・アントワネットの寝室のかわいらしいこと。「M・A」と枕の上の場所に刺繍が施されてあった。

 しかし、これほど悲惨な結末が、世に轟いている宮殿も珍しいだろう。肖像画や調度品、壁の絵、シャンデリア、中庭・・・。当時は解放されていて、庶民も自由に宮殿に出入りすることが許されていたという。ヴェルサイユ宮殿が荘厳で美しければ美しいほど、結末のコンコルド広場が眼前に広がる。

 しかし、断頭台の露と消えたルイ16世とマリー・アントワネットはまだ、遥かにましな一生だったと思う。彼らの子どもたち、特に、ルイ・シャルルのその後を知ると、こんな地獄ってあるのだなあ、と心の芯が冷たくなって痛みだす。

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