お金持ちは突き抜けている

エッセイ

 庶民のわたしでも、時々、お金持ちの人と話をすることがある。

 元機関投資トレーダーで個人投資家の先生(わたしはこの先生の大ファン)に、

 「わたし、老後は年間300万円くらいで暮らせたら、と思っているんですよね」

 と、ZOOM でお話したら、

 「え、え、年間300万円で生活ですか?まあ、やろうと思えばできないことはないかもしれないけれど・・・。でも、それなら貯金で良くないですか。わざわざリスク取って投資するのは豊かな生活をしたいからでしょう?」

 と、びっくりしたお顔をされていた。年間300万円、月25万円の生活って、日本の地方で、車を持たず、ローンのない家で暮らすなら、十分快適だと思うのだけれど。まあ、日々、おそらく億単位で株トレードをされている先生には想像し辛い暮らしかもしれない。

 また、お金持ちの個人事業主(はっきり言うと「タイ式FIRE」のハシナリーさん)がyoutube で、

 「わたしは2回目の破産の危機を迎え、しばらく泥水を啜るような生活をしていましたが、父親から資金援助をしてもらい、その一年後に事業が再び軌道に乗るようになり、父親にお礼としてベンツを買ってあげました」

 と、おっしゃっていた。

 え、ベンツ?と、驚くわたし。泥水を啜るところから、一年後にベンツ購入!?

 「父親にお礼として、眺めの良いレストランでランチをご馳走してあげました」 

 じゃ、ダメなのかしら。まあ、ベンツは税金対策で購入されたのだと思うけれど。お金持ちの言うことって、どこか突き抜けていて興味深い。

 また、不動産会社を経営されていたおじいさんが、

 「昔ね、1億5千万円のお金ができた時、1億8千万円のマンションを衝動買いしてね。で、生活に困って、次の日からサラ金まわりしてね。で、結局、そのマンションもすぐに叩き売ってね。ヒャヒャヒャヒャ。何をやっているんだか。商売人は金銭感覚がどうしてもおかしくなっちゃうんだよね」

 と、遠い目をして笑顔で話してくれたこともある。お金持ちにはお金持ちゆえの失敗もあるようだ。

 わたしが友人と、老舗ホテルのイタリアレストランで食事をしていた時、青いシャツとジーンズ姿の70代くらいの男性が一人で入って来られた。案内されたのは入り口近くの席だったにも関わらず、その男性は始終にこやかでコース料理を楽しんでいらっしゃった。荷物は白い小さめの紙袋のみ。

 この人は、実はお金持ちではないかなあ、と、わたしは直感的に思った。何故なら、外見にまったく見栄を張っていない。本当のお金持ちは見栄を張らない、と聞いたことがある。何もかも満ち足りているから、外見を着飾って承認欲求を満たそうとなどしないのだろう。一人でふらりとイタリアレストランに来て食事をし、店員さんにも丁寧な言葉遣いで、小川のせせらぎでも眺めている雰囲気。白い小さな紙袋に、おそらくスマホと財布を入れているところもお金持ち特有の無頓着さではなかろうか。

 食事を終えたら、タクシーで帰るのかな。いや、お金持ちって、意外とフットワークが軽く、バスで移動するのかも。お金を使わないのが、新鮮で楽しいとか。

 まあ、庶民のわたしはいろいろ妄想して、楽しんでいる。

 考えれば、わたしはタクシーに何年も乗っていないなあ。

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