カントリーライフは苦手

エッセイ

 わたしは11歳まで海辺で暮らし、29歳まで山の麓で暮らした。

 11歳までの海辺の暮らしは、幼かったこともあって断片的にしか記憶がないけれど、山の麓の生活は嫌というほど覚えている。一言で言うと、虫だらけ。悩みの中心が虫だった。

 服は、シルクやウールといった天然素材のものから虫喰いの穴が空いていく。わたしは社会人になった最初のボーナスで奮発して買ったスーツを陰干ししたら、その日のうちに虫喰いの大きな穴が空いたことを今だに忘れられない。(涙)

 秋は窓を開けておくと、すぐにカーテンの下に大量のてんとう虫が、越冬のために集まってくる。てんとう虫なんて、1、2匹なら可愛いいけれど、ウジャウジャ集まっていたらすごく気持ち悪い。ベランダから外に出すと、彼らは怒って尻から臭い汁をわたしの掌に引っ掛けていた。

 砂糖でも床にこぼそうものなら、すぐにアリが隊列を作る。

 また、田舎のゴキブリは、10年は生きていそうなほど、頑丈で大きい。アースジェットを振りかけても、長い間バタバタとのたうち回り、見ているうちに呪われるんじゃないか、と怖くなってくる。あの黒光りしたゴキブリが、刺身のかけらをガシッとくわえて走っていく姿も目に焼き付いている。

 そして、何と言っても厚かましいのはカマキリ。肩に何かがいる気配がし、見ると大抵はカマキリが鎌で顔を擦っていた。ググると、前脚のブラシの部分で目を磨いているらしい。それなら、草むらでやってくれない、って思う。人の肩に留まって目のお手入れをするなんて、捕食者の驕りというものではないかしら?

 永遠を感じた、カメムシの臭いと読経のような蝉の鳴き声。道端で、よく車に引かれてペチャンコになっていたカブトムシ。

 虫ではないが、蛇が風呂の水で泳いでいるところも見た。ムカデやナメクジとも、夏は毎日会っていた気がする。

 長らく、ソロキャンプなるものが流行っているようだけれど、わたしにはとても無理。どうして、好き好んで、虫たちのアジトで寝たりするのかしら・・・。

 わたしは、今、都会のカエルになり、休日はアパートでダラダラと、猫と遊んで過ごしている。ファーブルさんには悪いけれど、虫とは友達になれなかったの。

 

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