猫たちのお皿

エッセイ

 我が家では2匹の猫を飼っている。

 2匹とも成猫だが個体差が大きく、先に来たジジは5.5キロで、後に来たアリスは2キロしかない。

 だから、遊んでも喧嘩しても、アリスはジジに押され気味。ジジがアリスに飛び乗って、アリスがムッとした顔をしていることがよくある。

 2匹の猫を飼って、気持ちが顔に出る猫と出ない猫がいることに気付いた。ジジはいつも穏やかな可愛らしい顔をしているが、アリスは結構気難しく、時折ムッとした顔をする。そして、お腹空いた、チュールちょうだい、(猫用)ミルクちょうだい、と幼児のようにわたしにまとわりつき、トイレや風呂のドアの前でいつも待っている。

 ジジは、まな板の上で寝るのが好きという変わった嗜好があるので、我が家ではまな板は洗ったらすぐにフックに吊るすようにしている。

 さて、猫のお皿はジジには子どもたちがキャンプで使った白いプラスティックのものを、アリスには猫の顔の形をした陶器の皿を使わせていた。猫の顔の形をしたお皿は友人からいただいたもの。アリスはいつまで経っても身体が小さく、あまり食べないので、小さめのお皿で餌を与えていたのだ。

 ある日、嫌な夢を見た。わたしの腕の中でジジが死んでしまう夢だ。目を瞑っていたジジが大きく息を吸い、目を開く。

 「ジジちゃん、死なないで!」

 わたしは泣きながら、ジジの小さな頭を撫で続ける。

 「お母さん・・・」

 ジジが肩で息をしながら言う。夢の中なのでジジが言葉を話しても驚くことはない。

 「あのね、わたしも、ホントはあの可愛いお皿でご飯を食べたかったの」

 「ジジちゃん・・・」

 ジジが再び目を瞑ったところで、わたしは目が覚めた。猫は人間の子どもでいうと3歳くらいの知能があるということを思い出した。わたしはなんていうひどいことをしていたのだろう。

 わたしはその日からお皿を交互に変えながら猫たちにご飯をあげている。(もう一つ買えば、というご意見もあるでしょうが、わたしはお皿などは今あるもので済ませたいの)

 「考え過ぎじゃない?」

 娘が完全にあきれたように、冷めた声を出した。

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