友人の猫、”フワ”のこと

エッセイ

 先日、職場に昔の同僚が訪ねてきた。

 何でも、3年前、家の軒先でオスの子猫が鳴いているが、どうしたらよいか、という相談をわたしにしたら、

 「放置したら、子猫は死んでしまう、これは何かの縁だからぜひ飼ってあげて」

 と、言われ、飼っている、という。(どうして、自分のことなのに他人の話のように書くかというと、わたしはすっかり忘れていたからだ。言われてみれば、そういうことがあったかも、と思い出した)

 しかも、わたしは、市内で一番安く猫の去勢手術をしてくれるペットクリニックの紹介までしたそうだ。(あー、歳をとると記憶機能が働かなくなる、怖いことだ)

 その時、友人はすでに家の中で人見知りの激しい猫を飼っていたため、その子猫を外猫として飼うことにしたそう。物置をきれいにして、猫の寝床を作り食事を与え、去勢手術も無事に終えた。垣根の上から、ムササビのようにフワッと飛んでくることから、名前を「フワ」と名付けたという。

 時折、猫の避妊手術や去勢手術に反対する人がいるけれど、手術をしなければ定期的にくる発情期が猫に大きなストレスを与えるし、相手を求めて遠くまで彷徨い家に帰って来れなくなる可能性がある。今以上に不幸な猫を増やさないためにも必ず手術は受けさせてあげてください。

 さて、最近、フワが隣の家の玄関に入っていくのを何度も目撃するようになった、という。お邪魔して申し訳ないなと思いつつ、いつものように庭で餌を与えていたら、隣の家の奥さんが出てきて、

 「うちのフワに、いつもおやつを与えていただき、ありがとうございます。猫をお好きでいらっしゃるのですね」

 と、深々と頭を下げられた、という。

 「ということは、わたしの役目は終わったのよね」

 友人は、そうわたしの顔を覗き込んだ。

 

 

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