外国古銭を買ってみる

エッセイ

 指輪を売った。

 思っていたより高かった。

 使っていない18金の指輪を二つほど、質屋に持って行っただけなのに、少し得をした気分になった。金属の値上がりが、こんなにも身近なところに影響しているとは知らなかった。

 その流れで、ふと、別の「金属」に興味が向いた。

 ネットで、外国古銭三キロ、1万円で買ってみた。

 売主は、古銭専門店だったが、金貨はおろか、銀貨もそれほど多くは入っていないということだった。それでも、届くのが楽しみだった。

 箱を開けると、見たことのないコインがぎっしり詰まっていて、金属特有の匂いが立ち上った。

 ウルグアイの10ペソ。

 スウェーデンの1クローナ。

 メキシコの50センタボ。

 「おまけ付き」と書かれてあった通り、銀貨も10枚ほど入っていて、試しに調べてみると、全部で三万円を軽く超えていた。売るつもりはないけれど、少しだけ嬉しい。

 その中で、一番惹かれたのは、メキシコのコインだった。

 アステカの人々は、神から 「鷲が蛇を食べている姿を見つけた場所に都を築け」 と告げられたという。

 その伝説の通り、コインの裏には、サボテンの上で蛇をくわえる鷲が刻まれている。

 小さな円盤の中に、ひとつの神話が閉じ込められている。

 カナダの、トナカイやビーバーのコインも絵本の挿絵ように愛らしい。

 オーストリアの1シリングに描かれたエーデルワイスは、静かな山の空気を思わせる。

 南ベトナムの100ドンや、文化革命の最中に作られた1961年の中国の1角硬貨。

 フィリピンの蝶のコイン。

 パキスタンのアラビアコイン。

 インドのルピー。

 それぞれに、時代と土地の気配が宿っている。

 イランのリアルを磨いてみた。

 鈍く光った。

 小説を読むのが好きなわたしは、ロシア時代の1コペイカや1ルーブル、フランスのサンチームコインを見ていると、物語の中の人々の暮らしが、ふっと立ち上がってくる気がする。

 これらのコインを持って、人はパンを買い、酒を飲み、誰かと別れ、誰かと出会ったのだろう。

 その手を離れ、遠くから巡ってきたものが、いま、自分の手のひらにある。

 なんだか不思議な気がする。

 歴史の中をくるくる回っていたコインは、わたしの家のかごの中で混じり合い、今、静かに眠っている。

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