家の周りを歩く|お金を使わない暮らしの静かな豊かさ

エッセイ

 退職してから、生活の輪郭が少し変わった。

 やりたいことは、読書と運動、そして海外旅行。

 でも、海外に行くのは、やはりお金がかかる。長年の夢ではあったけれど、気軽に繰り返せるものでもない。

 だからだろうか。

 気づくと、家の周りを歩く時間が増えていた。

 神社の境内に入ると、空気が少し冷たい。名も知らない木の葉が、風に揺れている。

 美術館では、小さな展示がひっそりと開かれていて、人もまばらで、声も低い。

 アパートの一階を改装した食堂では、昼の光の中で、誰かが静かに箸を動かしている。

 遠くへ行かなくても、景色はあった。ただ、見ていなかっただけなのかもしれない。

 路地に入ると、猫がこちらを見ている。近づけば逃げるが、少し離れるとまた振り返る。

 思いがけず、急な坂に出ることもある。息が上がるほどの傾斜なのに、上まで行くと、少しだけ視界が開ける。

 歩いているうちに、何かが静かにほどけていく。

 バザーに立ち寄ることもある。

 本や雑貨、タオルや皿。どれもびっくりするほど、お安い。ひとつだけ選んで、手に取る。それで十分だと思えるようになった。

 若い頃は、外食が楽しみだった。

 フレンチや寿司を食べれば、それだけで一日が少し特別になった。

 けれど、今は、1万円を払うことに、少しだけためらいがある。

 同じことを繰り返せば、特別だったものは、やがて輪郭を失う。

 それよりも、陽射しや風、花や木の匂いを感じている時間の方が、確かに自分の中に残る。

 歩いていて、ふとお腹が空く。

 パン屋で、好きなものをひとつだけ買う。あるいは、ケーキ屋で小さなケーキをひとつ。

 ベンチに座って、ゆっくり食べる。

 それだけのことななのに、どこか満たされる。

 ひとりで過ごす時間が、愛おしくなった。

 自由になった、というよりも、もう、無理に何かを求めなくてよくなった。

 ありのままでいい。

 

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