台湾の臭豆腐と和解したいアラカン

エッセイ

 昨年の6月、わたしは台湾の台北を、土・日・祝日を利用して2泊3日で旅行した。

 近くの国際空港から、台湾まで直行便があり、二時間半のフライトで着く。ちょっと遊びに行くには、ちょうどいい距離。

 タピオカミルクティが500mlサイズで、確か、300円もしなかった。タイほどではないがマンゴーもお安い。お安いと言ってもカットマンゴーがワンパック600円ほどなので、タイの150円に比べると割高だけれど、それでも日本の高価なマンゴーに比べればお安いと言い切ってもいいだろう。

 台湾の良いところは、何といってもぼったくりがなく、チップ制度がないところだ。物価は、台北市しか行っていないので今ひとつ把握しがたいが、日本の物価の八掛けという所感を持った。

 台湾人が親日であるとはよく言われることだが、わたしも『千と千尋の神隠し』の舞台になったと噂される(実際は違うようだ)九分で、80代の女性にお寺の場所をガイドブックの写真を見せながら尋ねたら、

「ああ、それならすぐそこ。それより、あなた、今晩寝る場所あるの?」

 と、流ちょうな日本語で聞かれたりした。そんなことをきかれたことなど、今まで、日本でもなかったので、すごく嬉しかった(が、もちろん、ホテルに泊まった)

 台湾で見た、総督府が美しいが威圧的で、銃を持った警備の人が何人かいたりし、わたしは怖くて写真を撮ることもできなかった。日本の統治下の時代、台湾人はこの建物にどれだけ怖い思いをしてきたのだろう、とそんなことを考えたりした。(この建物は現在、中華民国総統府として使用されている)

 首都の台北は、三越があったり、博物館や美術館の雰囲気、人々の顔や服装が日本人とよく似ている。一方で、台湾人は不動産にお金をかけない、と言われるように、崩れ落ちそうな古いアパートや低層ビルが野草のように立ち並び、よく言えばレトロな、悪く言えば雑然とした通りが多かった。

 しかし、台湾には豆花という、プリンやゼリー、果物、白玉団子、小豆などが入ったスイーツが大きな器に山盛り300円ほどで売られていて、楽しい。

 飲茶やいろんな種類のお茶も気軽に楽しめる。ルーローファンやルーローメンなどB級グルメも200円から500円くらいでお腹いっぱい食べられる。小さな食堂では、「最低、100NTDは使ってください」という貼り紙があるのも興味深い。

 台湾で唯一、辛かったのは、臭豆腐の臭いだった。臭豆腐の臭いは、昔の田舎の、ボットントイレ(汲み取り式トイレ)のようで、ナイトマーケットや市場、食べ物屋が集まっているところでは必ず強烈な臭いが漂っていて、頭がクラクラした。ウイキペディアによると、「湖南農業大学が長沙の臭豆腐の分析をした例では、多少発酵液の成分を変えても、共通して糞便臭を持つインドールタマネギニンニクに含まれる二硫化メチル三硫化メチル、甘いロースト臭を持つ2,3,5,6-テトラメチルピラジンなどが多く検出された」という。

 昔、ベトナムに、台湾人が臭豆腐の店を出したが、ベトナム人が臭いに耐え切れず、直ちに撤収させられたという話を聞いたことがある。(日本では2016年にJR関西線で臭豆腐が原因の異臭騒ぎが起こり、1時間45分に渡って運行が見合わされ約4,750名の乗客に影響が出たこともあるようだ)

 台湾で、わたしは、あまりにも臭豆腐の臭いが辛くなり、臭豆腐と和解したくなって、思わず鄙びた食堂に飛び込み、「臭豆腐入り腸麺」なるものを注文したが、出てきたのは腸麺とニラ饅頭だった。

 わたしは、アイフォンのグーグル翻訳を使って、

 「わたしが頼んだのは、これではありません。臭豆腐入り腸麺です!」

 と言ったが、店主のオジサンは、

 「外国人には無理だよ」

 という風に、しかめ顔を横に振った。

 しかし、台湾にはまた旅行に行きたい。そして、臭豆腐を必ずわたしの好物にしたい、とアラカンは妄想するのだった。

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