鉛筆回しとマインドフルネス

エッセイ

 わたしが12歳の頃、中学校で鉛筆回しが流行った。

 わたしも、時間があれば練習し、そのかいあって時計回りでも反時計回りでも、両手で同時に鉛筆をくるくる回すことができるようになった。

 どうして、あの頃、鉛筆回しが流行ったのだろうと考えたのだが、あれは、今流行りのマインドフルネスだったのではないだろうか。一日、6時間の授業と定期テストや実力テスト、抜き打ちテスト・・・。あー、今となっては点数などどうでもいいのだが、とにかくストレスまみれだった。

 加えて、わたしはコミュニケーション能力が欠落していたから、学生生活が苦痛で仕方がなかった。

 鉛筆回しは、回している間だけだけれど、ストレスからの苦痛が和らいだ気がする。

 そのことにアラカンになって気が付き、中国の健身球をメルカリで購入してみた。二つのひんやりした球を掌でくるくる回すと鐘の音のようなありがたい音が鳴り、確かに掌の感触に神経が集中する。色もフクロウの絵も気に入っている。しかし、めったと取り出すことがない。相変わらず鉛筆をくるくる回している。鉛筆やシャーペン、ボールペンといったものが、常に手元にあるからだ。取り出すひと手間があるものと、今手にしているものがあれば、人はより手軽なもので済まそうとする。(わたしだけ?)

 知っている人も多いと思うけれど、鉛筆回しは外国でやると、途端に周りの人たちに注目され、やり方を教えて!と話しかけられる。手軽にちやほやされ、いい思い出ができる。

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