スペイン南部のネルハは、美しい海辺のリゾート地だった。
白い壁に青いドア、窓辺にはブーゲンビリアの花。路地に並ぶテーブルでは、家族連れがパスタやピザを囲んでいる。手ごろな値段のブティックが軒を連ね、マッサージ店やカフェも多い。通りを歩いているだけで、休日の気分になる。
賑やかな通りを奥へと進むと、やがて「ヨーロッパのバルコニー」と呼ばれる展望台に出た。
目の前には、青く透き通った地中海がどこまでも広がっていた。真下のビーチでは、大勢の人が波と戯れ、歓声を上げている。

ここで知り合ったギリシャ人に、旅してよかった場所を尋ねると、
「スコットランドのエディンバラだよ。建物が素晴らしいよ」
と教えてくれた。
ところが、そのあとホテルのエレベーターで、たまたまスコットランドから来た人と乗り合わせた。
「エディンバラって、素敵なところみたいですね?」
そう言うと、彼は顔をしかめた。
「暗いだけだよ。雨と霧ばっかりだよ」
あら、ずいぶん違う。
訪れる人と、そこで暮らす人では、同じ街でも見え方が違うのかもしれない。ネルハの明るい海を見たあとだったので、雨と霧の街を想像するのは、少し難しかった。
そのネルハから山の方へ向かうと、白い村、フリヒリアナがある。
この旅で、わたしが楽しみにしていた場所のひとつだ。
バスを降りると、山の斜面に張りつくように、真っ白な家々が肩を寄せ合っていた。
細い路地には、小石を敷き詰めたモザイク模様の石畳が続いている。歩くにつれて模様が変わり、足もとを見ているだけでも飽きない。

ふと見ると、青いドアの足もとに、小さなネズミのための扉がちょこんと描かれていた。
こんなところにまで。
窓辺からはウサギの置物がこちらを見つめ、白い壁には蜂の絵が飛びまわっている。植木鉢から花がこぼれ、角を曲がるたび、また違う家が現れる。
次は何があるのだろう。
小さなものを見つけるのが楽しくて、つい、もう少し先まで歩きたくなる。まるで絵本の中に迷い込んだようだった。
フリヒリアナのいいところは、「これを見なければ」という切迫感がないことだ。
気の向くままに土産物屋をのぞき、疲れたらカフェやレストランでひと休みする。食事をしながら、白い家並みの向こうに光る海を眺める。それだけで、十分に満たされる。
わたしが訪れた日には、フランス人の歌手が撮影をしていた。この村を舞台にしたくなる気持ちが、分かる気がした。
スペインの白い村といえば、ミハスが良く知られている。けれど、今回、わたしが歩いたフリヒリアナも、誰かに勧めたくなる村だった。
ネルハの海を楽しんだあと、半日だけでも足を延ばしてみてほしい。
気になる路地に入り、足元の模様を眺め、疲れたらひと休みする。
何かを見逃していないかと気にせず、ただ歩く。そんな時間が、旅の中にあってもいい。
🍃写真を見るだけでも、南スペインの美しさに浸れます。

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