コルドバは美しかった。
旧市街の細い路地を歩くと、白い壁の家々がどこまでも続いている。扉は赤や青に塗られ、窓辺や壁には鉢植えが掛けられて、花々が咲き乱れている。ふと開いた扉の奥をのぞくと、タイル張りの中庭が花で埋め尽くされていた。
これ、これ。わたしがイメージしていたスペインは。
歩き疲れて入った小さなバルで、地元の人に勧められたのがサルモレホだった。トマトとパン、オリーブオイル、にんにくを滑らかにすりつぶした、コルドバ生まれの冷たいスープだ。

上にはゆで卵と生ハムが散らしてある。とろりとした一匙を口に運ぶと、トマトの甘みとオリーブオイルの香りが広がり、強い陽射しで火照った体にすっと染み込んでいく。
この店では、「ここに座っていいですよ」と、うら若き青年から声を掛けられ、うっとりした。まあ、おばあちゃんと思われたのかもしれない……。
夜になれば、フラメンコの店に明かりが灯る。路地の奥から、ギターの音と手拍子がこぼれてくる。
小さな店に入ってみると、一人の女性が歯切れのいいフラメンコを踊っていた。
音とポーズがぴたりと決まるたびに、胸の奥へ美しいくさびが打込まれるようだった。

そして何と言っても、この町で圧倒的な存在感を放っているのが、メスキータだ。
モスクとして建てられたこの建物は、その中央にキリスト教の大聖堂が造られたことで知られている。
その改変を目にした王カルロス1世が、「どこにでも建てられるものを造るために、世界に一つしかないものを壊してしまった」と嘆いたという逸話も残っている。
扉をくぐった瞬間、アンダルシアの白い陽射しが背後で断ち切られる。
目が闇に慣れると、柱が現れる。一本、また一本。
柱たちは、同じ間隔を守って並んでいる。その上で、赤い煉瓦と白い石の二重アーチが連なっている。

赤、白、赤、白。
どちらを向いても同じ縞が重なり合い、遠ざかるにつれて薄闇に溶けていく。
ここで終わり、という壁が見えない。
無限のように続く繰り返し。
同じ形が続いていることを、これほど美しいと思ったのは初めてだった。
美しくて、ほの暗い森を彷徨っているようだった。
身体の芯が痺れてくる。
六十歳を過ぎたわたしが、これから歩く世界も、メスキータのようであったらいい。
日々の切り返しの中で、こんなふうに美しさと出会えたら……。

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