今回、わたしは25年ぶりの海外旅行で、タイのパタヤに行ったが、そこは「見栄」とは無縁の世界だった。
わたしが持って行ったのは、ドンキで買った4,500円のキャスター付きの黒い旅行カバン(30リットル)と、1,750円で買った同じく黒いショルダーバック、それから、100円ショップで買った布の財布3つ。
どうして財布を3つも買ったかというと、道端で「財布を出せ」とナイフで脅されたりしたら、そのうちの一つを差し出そうと考えたからだ。財布には5,000バーツ(現在のレートで約20,000円)ずつ入れて、旅行カバンやショルダーバック、ホテルの金庫などで保管し、適当に回しながら遣っていた。幸いにも、タイでスリや強盗に襲われることもなく、のんびりと揺蕩うように、南国の生活を楽しむことができた。
やっぱり、パタヤって、いい。
皆、グレーや白のTシャツと短パン、そしてビーチサンダルで、25バーツ(100円)のスムージーを片手に、ビーチでくつろいでいる。お腹が空いたら、60バーツ(240円)ほどのカオマンガイやパッタイなどの美味しいローカルフードや、マンゴーやドラゴンフルーツ、ココナッツ、ライチの入ったフルーツパック(40バーツ(160円)ほど)を食べればよい。よりリラックスしたければ、一時間100バーツから200バーツ(400円から800円)で足つぼマッサージを受けることだってできる。
パタヤでは、おしゃれな服や宝石、ブランド品など、スリや泥棒に目をつけられるぐらいが関の山で、何の意味もなさない。皆、Tシャツと短パン姿でひたすらリラックスしており、他人の恰好など見ていない。着飾ったりしていたら、パタヤでさえもリラックスできない痛々しい人、と思われるかもしれない。必然的に誰も話しかけてはくれないだろう。(なお、タイにはブランド品屋台なるものが存在し、ハイブランドの偽財布や偽バックを500バーツほどで大量に売っていたりする)
100円ショップで買った布の財布は、軽くて、しっかりしていて、いざという時は二つに折って手で握りしめられるところに安心感があった。黒や紺で汚れも目立たず、気軽に洗うことができる。
どうして、わたしは、日本では、重くて、アホのように高いブランドの財布を使ったりしているのだろうか。
きっと、働くストレスと戦うために、身なりを鎧で固めているのだろう。刀の代わりに、指輪をギラつかせて。子どもの頃、ひどい貧乏に打ちのめされていた経験も、わたしの見栄に拍車をかけている気もする。
パタヤに行って、つくづく見栄を張る無意味さを実感した。見栄で生きていたら、お金も貯まらず、お金の不安もなくならない。幸せからは遠のくばかりだろう。
100円ショップの財布で十分幸せを感じられる場所、それがパタヤかもしれない。
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