タイのパタヤに行ってきました③〜海外旅行は若いうちに〜

エッセイ

 「海外旅行は若いうちに行け」とよく言われる。

 25年ぶりの海外旅行で、タイのパタヤに行って来たアラカンのわたしも、確かにそうかもしれない、と思う。

 タイに向かう機内で、隣の席の大学生らしき男性二人が、

 「今からタイに行けるなんて信じられないな!」

 「まず、ローカルなタイ飯を食おうな」

 と、感極まった声で声で言い合い、頬を紅潮させて頷き合う様子を見て、わたしにも彼らのキーンとした胸の高まりが伝わって来た。

 わたしはパタヤに行く前にバンコクで二泊し、童話の世界のような王宮通りを歩き、それは美しいエメラルド寺院にも入ったが、

 「まあ、こんな世界もあるだろう」

 と、悲しいかな、一度も胸が熱くなることはなかった。

 それよりも、35年前にタイに来た時に頻繁に見た、10歳前後の子どもたちが屋台を引いていたり、お母さんと赤ちゃんが路上で寝ていたり・・・というような胸が痛む場面に一切遭わなかったことに安堵する気持ちの方が大きかった。

 ラン島からパタヤへの帰りに、タクシーの合皮のシートを海水で濡らしてしまい、

 「よくも、オシッコしやがったな。料金は5倍払え!」

 と、ガタイの大きなドライバーから大声を出され、周りにいたタイ人に笑われ、500バーツ(2,000円)を支払うハメになったことも、もちろんその瞬間は悔しくてたまらないが、すぐに笑い話となる。

 パタヤで日本食堂に入り、メニューにあったお握りと冷奴を頼んだら、

 「今日はない。セブンにあるよ」

 と、向かいのセブンイレブンを指差されたことも、愉快な思い出。

 アラカンにもなるとどこか冷めている分、パスポートやお金の管理にも慎重になれるし、出会う人との会話もひたすら心地良いものを選びとっていける。これは、良いポイント。物欲も減り買い物をせず、必要なものは現地で買おうという鷹揚さを持てるから、機内持ち込みができるくらい荷物は小さくなり移動も楽。搭乗手続きも簡単で、ロストバゲージを心配しなくて済む。

 ひとりで、パタヤビーチを眺め、激安のパッタイとマンゴーを頬張り、1時間400円の足ツボマッサージを受ける。

 南国特有の甘い香りとパタヤビーチの波の音、海の匂い、空の美しさ。手には、25バーツ(100円)のパパイヤスムージー。

 若い時ほどの感動はないけれど、アラカンの身の丈にあった一人旅は、海鳥が風を受けながら羽を広げ空に浮いているような感じ。どこまでも気楽で、限りなく自由だ。

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