衣替えという作業

エッセイ

 結婚する前、実家では毎年2回、衣替えという作業があった。

 押し入れからプラスティックケースをいくつも取り出し、夏物と冬物を入れ替える。

 出したばかりの服は少し黴臭く、洗いなおしたり、陰干ししたりする。実家は田舎だったから、虫に食われている服も結構あった。それでも母は捨てられず、ビニール袋に入れ、再び押し入れにしまっていた。

 ふと、思う。あの作業って、必要だったのだろうか?

 大家族で、兄弟姉妹のいる家では必要な作業かもしれないが、一人っ子だったわたしは無駄に古着をたくさん持っていたに過ぎなかった気がする。父も母もそうだ。だから、どの押し入れも服ででぎゅうぎゅうで、着られる服もすぐには見つからなかった。

 確かに、布が一枚一枚手作業で織られていた時代は、布は高価で貴重品だっただろうから、リメイクしたり、かけつぎしたりして再利用していたのだろう。しかし、わたしの母は裁縫は大嫌いで、ボタンの付け替えすら、なかなかしようとはしなかった。

 今は、着なくなった服はすぐにブックオフにとりにきてもらっている。新品でタグが付いていても、一枚5円くらいの値しかつかないが、誰かに着てもらえるかもしれないと思えば潔く手放すことができる。

 メルカリに出品するのもいいけれど、服はサイズや痛み具合など、説明するのも大変そう。例えば、ずっと前にネットで読んだのだけれど、不具合をいろいろ説明して購入が決まり、梱包しているうちに小さな染みを見つけた時の無力感って半端ないらしい。

 今のキャビネットには、必ず着る服がすっきり並んでいる。冬物も夏物も仲良く。

 ミニマリストではないけれど、物の数は少なめの方が、心地いい。

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