ペットの葬式費用

エッセイ

 わたしは、1,200円カット店で髪を切ってもらっている。

 所要時間は20分くらいであっという間に終わるし、1回行くとポイントカードにスタンプがもらえ、10回分貯まると1回無料でカットしてもらえる。とても助かる。

 髪など伸ばしっぱなしで半年に一度くらい切ればいいのではないか、と思うが、毎日洗いたいし、洗うと乾かさなければならないから短い方が良いし、かといってショートにするとオバサン度が増す気がし、結局ずっとセミロングにしている。

 先日、髪を切ってもらっていたお兄さんと飼い猫の話になった。

 「お兄さんは、その猫とどこでお会いになったの?」

 と、尋ねると、

 「ペットショップです」

 と、早口で答え、口をつぐんだ。

 こういう感覚、すごく分かる。つまり、ペットショップで猫を買った、ということを批判されたくないのだ。

 「わたしもそうですよ。ペットショップで猫を購入しました。結構、お高いですよね?」

 そういうと、お兄さんの表情から頑なさが消えた。

 「いや、うちの猫は売れ残りだったから、3万円くらいでしたよ」

 「それはお安く済んで、良かったですね。猫ちゃんにも家族ができましたしね」

 などと話していたら、今年の元旦に20年間飼っていた猫が亡くなって、その葬式代に30万円掛かったという。猫が死んだのは初めてで、当然のようにペットの葬儀会社に電話し、翌日葬式と火葬をしてもらった。正月の三が日だったので、普段より数倍費用が掛かった。葬儀会社から勧められるまま記念に足形のプレートを8,000円で作ってもらい、今、テレビの横に飾っているという。

 「今考えれば、猫に葬式なんて必要だったのか、と思いますけれど、なにせ、初めてのことで、どうしていいか分からなくて、家族が皆パニックになって・・・。気が付いたら小型の霊柩車が迎えに来て猫の葬式が始まった、という感じでした。若いお坊さんが来てくれて、短いお経をあげてくれました」

 お兄さんはそう笑っていた。

 「でも、その猫ちゃんは良い一生でしたよね。お葬式までしてもらえる猫なんて、そうそういませんよ」

 お兄さんの表情が途端に優しく輝いた。

 「うちはアパート暮らしで外に出さないようにしていたから、環境的にはつまんなかったかもしれないけど、いろんな人が集まってくる家で、チュールとか玩具とかもらっていっぱい可愛がられて、幸せだったと思いますよ」

 素敵な話だなと思った。

 

 

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