フランスの童話「ムカデのフフン」

エッセイ

 わたしが中・高生の頃、アンパンマンの作者、故やなせたかし先生が「詩とメルヘン」という本を毎月出版されていて、わたしも毎月楽しみに読んでいた。

 詩はすべて一般投稿されたものが、プロのイラストレーターの絵を付けられ、見開きA3の紙面に掲載され、わたしも何度も投稿し4回掲載してもらえた。(ちょっと自慢)

 まあ、わたしの詩などどうでもいいが、今でも大切に記憶の引き出しにしまっているのは、「詩とメルヘン」で読んだ、フランス人作家が書いた「ムカデのフフン」という童話だ。ググっても出てこないし、誰に聞いても知っている人がいないのが残念。ナンセンスの魅力が光った、心温まるお話だった。わたしが覚えている限りでは、下記のような話。

 「あるところにムカデの家族が住んでいました。そこには「フフン」という男の子がいて、とても頭が良かったので、両親は貧乏でしたがフフンのためにお金を工面して、百足の靴と鞄、筆記用具を買って、フフンを人間と同じ小学校に通わせることにしました。

 学校で、フフンは確かに勉強はできましたが、いたずらっ子で、百足の足でお友達を蹴ってみたり、先生に向かって消しゴムや鉛筆を投げて、笑ったりしていました。担任の先生は怒って、放課後、フフンを教室に残し、紙を渡して単語を百個綴るように命じました。

 フフンはあらかじめ、お友達から百本の鉛筆を借り集めていたので、すべての足で鉛筆を持ち、100個の単語を一瞬で書き終えました。そして、先生を見て、「フフン」と笑いました。

 その様子をたまたま見ていた生物学の先生が、

 「わたしは長年、ムカデの研究をしてきたが、ムカデがフフンと笑うところを初めて見た」

 と、驚いて目を丸くしました。」

 何だか、シュールで面白いと思いませんか。生物学の先生も、ムカデが学校に来ていることには驚かず、フフンと笑ったことに驚いているところに、作者のセンスを感じ、しびれました。

 この話は、子どもたちが2、3歳の頃から何度も話して聞かせてきた。もちろん、本物のムカデの危険性とともに。

 子どもたちは花壇などでムカデを見るたびに、

 「あれ、フフン、じゃない?」

 と振り返り、とびきり輝いた笑顔を見せてくれた。

 今でも、ムカデのフフンの話、覚えてくれているかなぁ。

 

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