メダカと心を通わせる

エッセイ

 以前、職場に前職がナレーターや司会だった女性がいた。声にハリがあり、話も面白い。いつも笑顔で、機転が効くから司会業などができたのだろう。

 「ペットは飼っていらっしゃるの」

 ある日、わたしは彼女に尋ねた。

 「はい。メダカをもりもり飼っています」

 「メダカって、今、いろいろな種類があるんですってね」

 興味津々で尋ねるわたし。

 ネットで知ったのだが、メダカも配合が進み、いろいろな模様やきらきら光る個体もあり、高価なものは100万円!するようだ。わたしは、天地がひっくり返ってもメダカ1匹に100万円を払うことはできない。というか、出せる人は大富豪だろう。イスラム圏の大富豪で、高価な鷹を1,000万円で買うような人。それで、鷹と旅行するために、飛行機のファーストクラスを自分と鷹のために二座席分、ポンと買うような人。いわゆるオイルマネーですな。

 「わたしが飼っているメダカは、普通のメダカですよ。普通の川にいる」

 「え、あのメダカですか?」

 「そう、あのメダカです」

 わたしの脳裏に浮かんだのは、小学生の時、理科の先生から勧められて水槽で飼っていたメダカ。メダカは卵をいっぱい生むので繁殖力も強いが、死ぬのも速かった気がする。水槽もこまめに洗わなければ臭うし、子どもの頃からものぐさだったわたしは放置しがちで、かわいそうなことをしてしまった。

 「でも、メダカって呼んでも来ないし、第一、皆、同じ顔でしょう」

 今思えば、かなり失礼な発言をしてしまったが、彼女は微笑みながら言った。

 「「崖の上のポニョ」がいっぱいいる感じです。餌をあげたら、気が付いたメダカが下にいるメダカをつついて回って、皆で餌をめがけて水面に上がって来たりするんですよ」

 ああ、それはいいわ。考えれば、小さな魚と心を通わせるって神秘的。

 何だかとても癒されました。

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