タイ王国への憧れ

エッセイ

 アラカンになって、わたしはタイ王国に憧れを募らさせている。退職したら、移住したいと思うほどまでに。

 どうして数多ある国の中でタイが好きかというと、まず、タイで知り合ったタイ人の姉妹が、とっても優しくて、大らかで、温かい人たちだったところが大きい。彼女たちはハンドメイドのブロンズ像をヨーロッパや日本に輸出していた。自分たちの会社と工場を持ち、何十人も職人を雇ってブロンズ像を作っていた。そして商談を行うため、世界中の貿易センターに飛び回っていた。日本の地方で家と職場を行ったり来たりしているだけのわたしは、気風の良さとインテリジェンスを身につけた彼女たちと話をしていると時間が経つのを忘れるくらい楽しくて、キラキラした気持ちになれたものだ。

 そして、何と言ってもタイの魅力は、物価の安さ。ガパオライスやパッタイ、カオマンガイ、マッサマンカレー、コーム・ヤーン・・・。どれも現地で食べると一皿、200円くらい。タイ料理は辛いけれど、「唐辛子は入れないでください」といえば問題ないし、野菜がたっぷり入っているし、日本人の味覚にもマッチする。マンゴーやドリアン、マンゴスチンという、日本では高級南国フルーツを格安で購入できるところもとっても嬉しい。わたしは、あの「カオニャオマムアン」を食べるのが夢。「カオニャオマムアン」とはココナッツルクで炊いた餅米に、マンゴーを添えたタイの伝統的なデザート。そう、わたしの心はココナッツを求めている。あの日本料理にはない優しい甘さを。わたしは心が弱っている時、タイのココナッツカレーを食べ、その優しい甘味と美味しさに不覚にも涙を流したことがある。もちろん日本のご飯が一番好きだけれど、日常過ぎるからか、琴線に触れてくることはない。

 そして、町並み。バンコクの中心地は近未来都市のようにおしゃれに作り込まれているけれど、ちょっと郊外に行けば、日本の昭和時代のような、郷愁をそそられる風景にいくつも出会える。そこは台湾と同じかもしれない。台湾と違うのは、タイは仏像や寺院が金色で神々しいところ。お坊さんも鮮やかなオレンジの袈裟を着ていて、見ているだけで元気をもらえる。街も東南アジアらしい、若い活気に満ち溢れている。

 タイのコンドミニアムは供給過多になっていて、郊外では3万円台でプールとジム付きの35㎡の部屋を借りられるようだ。

 うーん、行かない理由が見つからない。

 

コメント