ペットショップでの災難

エッセイ

 わたしが住んでいる街の繁華街にペットショップが3件ある。

 美しい雌猫をゲージに入れて延々と繁殖させることや、売り物にならない子や売れ残った子の末路を考えると、ペットショップはやはり罪深いと思う。

 個人的には、日本のペットショップとブリーダーという商売は法律で禁止してほしい。アビシニアンやラグドールといった血統の猫をどうしても飼いたいという富裕層は莫大なお金を出して、海外から輸入すれば良い。

 ペットショップではなく、自治体の動物愛護センターが繁華街に事務所を構え、保護した猫の里親を集うべきだと思う。ほとんどの人は、猫なんてキジでも茶トラでもミケでもかわいいのである。我が子になれば、眼の色や毛並みなどどうでも良くなる。ただ、動物愛護センターは得てして辺鄙なところにあるし、何となく敷居が高いし、色んな意味で近寄りにくいし、処分される犬猫のことを思うと悲しくなるしで、皆、懐の痛みを感じながら無理して大金を払い、ペットショップで犬や猫を買うのだろう。

 動物愛護センターが、繁華街に事務所を構え犬猫を譲渡し、ペットを飼う心構えや飼い方、マイクロチップの必要性、年間に係る費用、病院のかかり方などの説明を行えば、安易に飼ったり捨てたりもしなくなるのではなかろうか。いっそ、ペットを飼うことに免許制度を導入するのはどうだろうか。

 さて、わたしはペットショップの前を通る時、やはりガラス越しに子猫たちを覗いてしまう。猫や犬が可愛くて仕方がないのだ。ふいに、ロシアンブルーの子猫と眼が合った。子猫はつぶらな瞳で見返し、立ち上がった。

 「ホント、かわいいわね」

 気がつくと70代くらいの女性がわたしの隣で猫を見ていて、話しかけてこられた。

 「かわいいですね」

 と、わたしがうなづくと、

 「あなた、買いなさいよ」

 と、老齢の女性はいきなり強めの口調になって言った。

 「買えませんよ。ペットショップの猫って50万円くらいするでしょう?わたし、そんなお金、持ってませんよ」

 「え、お金の問題?あの子の顔を見てごらんなさい。あなたのこと、お母さんだと思っているわよ。やっと、会えたっていう顔しているじゃない。目をうるうるさせてさ」

 「そうですか?子猫だから、あんな顔しているんじゃないですかね?」

 「それは、違うでしょう。あの子猫、あなたの顔見てすぐに立ち上がったじゃないの。あ、お母さん、って言うの、あなたにも聞こえたはずよ」

 「・・・」

 わたしは、その女性に会釈すると、足早に立ち去った。

 「逃げるんじゃないわよ!」

 その女性はわたしの背中に向かって、怒鳴り声を上げる。

 何でこんなことに・・・。

 と、思うことが、何故かわたしには定期的に起こる。

 

 

 

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