できるだけ気楽に生きる

エッセイ

 アラカンになって、つくづく思うのは、他人の嫉妬が一番怖いということ。

 アラカンにもなると、人と比べないか、勝てることで比べるかの二択しかしないって悟る。(しかし、年齢に関係なく、嫉妬深い人はいっぱいいる。そして必死になって足を引っ張ってくる)

 結局、好きなことを思う存分やっている人が、一番幸せだろう。

 そういう人は、他人の持っているお金や才能、キラキラしたものなど、ホント、まったく気にならない。だって、自分の世界で生きているのだから。

 また、わたしは辛い記憶は何度でも柔らかな記憶で上書きしている。

 例えば、わたしの場合、母親の言葉に傷ついて生きてきた。

 あれは5歳くらいの頃だったと思う。小さなドジョウと同じくらいの大きさの金魚を水を入れた器の中で泳がせていた。二匹は丸い器の中をクルクルと回り、その様子をワクワクしながら眺めていた。二匹は追いかけっこして、楽しそうに見えた。

 しかし、翌日、器の中にはドジョウしかおらず、金魚は跡形もなく消えていた。母親は待ち構えたようにわたしを何時間も責めた。

 ああ、あの可愛らしい金魚はどんなに怖い思いをして泳いでいたんだろうね。結局、食べられちゃって、悲しかっただろうね。怖かっただろうね。あなたが二匹を同じ器に入れたせいよ!

 わたしはしばらくの間、ショックで口がきけなくなった。自分が金魚の気持ちになって怖くてたまらなくなったり、そんなことになってしまったのは自分のせいだとひたすら自分を責めた。

 大人になり、アラカンになった今でも、その時の自分に語りかけている。

 金魚さんがね、お家に帰りたいと泣いたから、お母さんが、川に放しにいったのよ。そしたら、金魚さんはニコニコ笑って、ヒレを振ってバイバイって、嬉しそうにおうちに帰って行ったのよ。

 わたしは母親になって、5歳の子どもだった自分に話して聞かせる。何十回も何百回も。思い出は上書きできる。簡単ではないけれど。

 悲しい記憶で心を病ませたりは、もうしない。

 

 

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