戻る途中

エッセイ

 朝の席に座ると、音がほとんどしない。

 ペンを置く音だけが、少し大きく聞こえる。

 貝殻の中のような場所。

 海の感触がある。

 冷たくて、塩辛い。

 言葉は、まだ遠いところにある。

 手を伸ばしても、届きそうで、届かない。

 けれど、前よりは近い気がしている。

 無理に引き寄せなくていいのかもしれない。

 しばらくは、この砂浜に座っていようと思う。

 戻るというのは、かつていた場所に帰ることではなくて、

 時の隙間に、静かに立つこと。

 わたしは、いま、その途中にいる。

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