欲しいものは逞しさ

エッセイ

 以前、仕事で知り合った20代の青年から、東南アジアへの旅行中に財布を擦られたという話を聞いた。バックの内ポケットに入れていた2万円だけで2週間、ベトナムを回ったという。トコジラミが出る500円の安宿に泊まり、水を買うお金も極力節約したから、

 「ベトナム、と聞いただけで、喉が渇いて仕方なくなるんすよ」

 と言っていた。また、その青年は沖縄のドミトリーにも1ヶ月滞在して、最安の食堂を利用して過ごしたこともあるという。

 「ドミトリーの中は肉体労働のおじさんもいっぱいいて、汗や腋臭や口臭で半端なく臭かったです。イビキもうるさくて。一日一食、その日にとれた魚を買ってその場で焼いてもらえる食堂でメシ食って、今思えば何であんなキツイことをしたんだろうって思いますね」

 という話もしてくれ、ああ、こういう逞しい人は、どんな世の中になっても生き抜いていけるのだろうな、と思った。わたしの息子もこんな風に成長してもらいたいものだ。

 前に、一人暮らしをしている息子のアパートを訪ねたら、ワイングラスで麦茶を飲んでいた。棚には香水の瓶が並び、時折りリップクリームを塗ったりしていた・・・。今は学生だから良いけれど、後50年以上生き抜いていけるのだろうか、すごく心配。

 話は変わるが、わたしは健康のため水泳を始めることにした。水着を着て、

「どう?」

 と、夫に見せたら、

「ボーリングのピンに見える」

 と言われた。

「ああ、そうですか」

 と、ドアを閉めて着替えるわたし。

 こういう時、歳とともに鈍感にはなったなあ、と思う。だって痩せようとか、水泳行くの止めようとか、まったく思わないのだもの。

 しかし、わたしは逞しくはない。ちょっとしたことでイジイジと何日も悩んでしまう。

 ああ、逞しい人間になりたい。

 逞しさを手に入れるには、アルコールとカフェイン、お菓子、煙草を遠ざけ、ウオーキングや筋トレで身体を鍛えることがいいようだ。そして、野菜や良質のタンパク質、ナッツ類などをバランスよく食べる。体幹が良くなり、内臓の調子や血糖値が安定すればかなり、気分も安定する。わたしは時間を見つけては、5分間のマインドフルネスを毎日3回行っている。行き帰りのバスの中と寝る前。立ったままでも目を瞑り、つま先や頬、目の裏などに意識を集中させる。脳の調子が良好に保てているような気がする。

 そして、心からやりたいことに打ち込む。

 人生は短い。不安や落ち込んだ気持ちを抱えて過ごすなど、もったいない。

 さあ、わたしもやりたいことにトライしよう。

 

 

 

コメント