楽器や歌が上手なのは一つの財産

エッセイ

 娘が中・高校生の頃、よく二人でカラオケに行った。(夫と息子はカラオケに興味がない)

 娘が歌うのは、絢香や優里、椎名林檎、アブリル・ラビーン、ワンダイレクション。娘の歳を考えれば、少し昔の歌も多かった。わたしは、映画「レミゼラブル」に出てくるいろんな歌やブライアン・アダムス、U2、マイケル・ボルトン、中森明菜など30年以上昔の歌ばかり歌う。

 特に、尾崎豊の「卒業」をわたしは必ずと言っていいほど歌っていた。

「行儀よくまじめなんて クソくらえと思った
 夜の校舎 窓ガラス壊してまわった
 逆らい続け あがき続けた 早く自由になりたかった
 信じられぬ大人との争いの中で
 許しあい いったい何 解りあえただろう
 うんざりしながら それでも過ごした
 ひとつだけ 解ってたこと
 この支配からの」

 と、ここまでわたしが歌い、娘に、

「卒業!」

 と、歌ってもらい、ガッツポーズをしてもらうと、気分がスッキリしたものだった。きっと、わたしは親や仕事、家事などのストレスで、毎日を鬱々と過ごしていた反動が出ていたのだろう。

 しかし、今となって考える。あれって、教育的な観点から見ると、いかがなものだったろう。

 母親が、

 「この支配からの」

 と、歌い、

 「卒業!」

 と、思春期の娘に歌わせるって、自分のことながら、今思い出すとちょっと怖い。

 幸いにも、娘は校舎の窓ガラスは割らなかったし、友達もいっぱいいて、先生たちともすごく仲が良かった。ギターを弾けて、歌も歌えて、文化祭でも人気者だった。そして、東京へとパタパタと巣立って行った。

 まあ、我が家はどちらかと言えば、子どもたちには甘かった。

 友達が遊びに来た時、娘がこんなことを言っていたのを思い出す。

 「うちの家、バグっているのよ。学校を休みたいって言ったら、母親が、うん、いいんじゃない、って言うし、父親が、じゃあ、お父さんとランチでも行こうか、とかって言うし。食事は煮物と酢の物しか出てこないけど、小遣いはいつでももらえる。うちの親、高齢出産で歳取っているから、小遣をいつあげたのか忘れるみたいなの。この前なんか、週に3回もくれたのよ」

 そうなのよね、忙しくて時間がビュンビュン過ぎて行って、子育てに十分手を掛けられなかった分、子どもたちに小遣いをあげて、自分をごまかしていたのかもしれないわね、お母さんは。でも、過去を振り返るのはやめましょう、さ、未来を向いて。(と、心の中で、子どもたちに語り掛ける、アラカンのテキトーな母親)

 でも、楽器や歌が上手って、一つの財産だと思う。youtubeなどで、プロはもちろん、アマチュアの人も、楽器や歌が一際上手な人を見ると、羨ましくて仕方がない。海外でも、音楽で皆の気持ちを盛り上げ、鷲掴みにし、心を伝えられる。すごくクール。

 いやいや、わたしも海外で人気者になったことはありますよ。鉛筆回しや折り紙、あや取り、トランプでちょっとした手品を披露したり。また、肉じゃがはどこの国でも大好評だった。

 ああ、何だかとっても地味・・・。

コメント