精神的に健康な人は言葉にこだわらない

エッセイ

 今日、夫が、

 「アリス(我が家で飼っている小さい方の猫)は、ぼくのことをどう思っているのかなあ?」

 と、聞いたので、

 「「お世話係」と思っているんじゃないの?」

 と、答えると、何を聞き間違えたのか(というか少し耳が遠い)夫は、

 「え、アリスは、ぼくのこと「ウスラバカ」だと思っているの?」

 と、目を丸くした。わたしはびっくりして、

 「そんなこと言ってないよ。アリスはあなたのことを、お世話係と思っているんじゃないかな、って言ったのよ」

 「あ、お世話係なんだ」

 「そうよ、「ウスラバカ」なんて言うわけないじゃない。今、ちょっとムッとしなかった?」

 「いや、どうしてムッとするの?ああ、アリスはぼくのことをそう思っているんだって、思っただけだよ」

 夫の言葉を聞いて、わたしはちょっと感動した。メンタルの健康な人って、言われたことを認識はするが、瞬時に意識から手放していくのだと。メンタルが健康な人にマインドフルネスは必要ない。わたしの夫は成熟した大人だなあ、と思う。

 これが、わたしのようにメンタルを病んだ者同士だったら、どんな会話になるだろう・・・。

 「ぼくはウスラバカなの?っていうか、じゃあ、君はどういうレベル?そもそも、ぼくは○○大学の○○学部を出て、その後、○○大学の○○学部の博士課程まで出ているんだよ。なんで、君からウスラバカなんて言われないといけないの?」

 「なあに、その言い方。学歴なんて、結婚する時から分かっていたことじゃないの。そんなことを言い出すなら、わたしと結婚しなければよかったじゃない?」

 「君が、ぼくをバカにしたからじゃないか」

 「いいえ、バカにしたのはあなたよ。○○大学だかなんだか知らないけれど、収入はパッとしないじゃないの」

 「収入のことまでバカにする?バカは人をバカにするというけれど、本当だな」

 「わたしがバカですって!?」

 ・・・書いていて、心がひりひりしてくるけれど、たぶんこういう感じになって、メンタルを病んだ者同士はだんだん疲れ果てて別居なんかを始めるようになるのではなかろうか。幼いころ、自己肯定感を育めなかった結果、自尊心の部分がむき身のようになっていて、言葉にビリビリビリビリ反応してしまうのだ。だから、わたしのようにメンタルを病んだ者は、メンタルが健康な人と結婚するのが正解だと思う。じゃあ、メンタルが健康な人にとって、メンタルを病んだ人と結婚するメリットがあるのか、と考えてみたが、細やかな気遣いをしてもらえたり、密な関係性を育めたり、自分の知らない突拍子もない世界を見られたりするかもしれない。

 さっき、夫に、

 「わたしは夕食を作るから、あなたは猫たちに餌をあげてちょうだい。食いしん坊のジジがアリスの餌を横取りしないように、二匹を「はなして」(離して)あげてね」

 と言ったら、夫は、

 「お父さんね、日曜日なのに今日も仕事してね。フリーランスの仕事って、時間が決まっていないから、意外と大変なんだよ。今日はね、○○市まで行ってね、雨が降ってきてね、でもだいぶん暖かくなってきたから風邪は引かなくて済んだけれど、やっぱり折り畳み傘をバックに入れておかないとだめだね。そうそう桜が咲いていてきれいだったよ。お前たちが人間の子どもだったら、桜を見に連れて行ってあげられるのになあ・・・」

 と、ずっと「はなし」(話し)てあげながら、二匹が餌を食べる姿を見守っていた・・・。

ご飯をいっぱい食べて眠るジジとアリス

 

 

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