いちご泥棒(Strawberry Thief)は、かのウイリアム・モリス(William Morris)のテキスタイルの中でも最も人気のあるもののひとつだ。
ー美しいものしか家に置いてはならないー
これはモリスの言葉として有名で、ぜひ、一度、おうちを拝見してみたかったものだとうっとり想像するが、妻はなんだか大変そう。そして、もちろん、とても美しい女性に違いない。なにしろ、モリスは美しいものしか家に置きたくなかったのだから。それに大変といっても、モリスは富裕層だから、お手伝いさんがいっぱいいたはずだし。(ちなみに、妻のジェーン・バーデンは極貧の中で育ち、モリスとの出会いによって教育を受けられ、貴婦人になったらしい)
わたしの夫など、夕飯を食べながら、「荒れ果てた、お母さん(わたしのこと)の部屋をなんとかしたい」とよく呟いたりしている。夫にとって、わたしの散らかった部屋がストレスになっているようだ。でも、座った状態で、何でも手が届くって最高だと思う。
ー座って手が届くところにしか、物を置いてはならないー
妻はよくそう言っていました。わたしの葬式で夫がそんなことを言わなければいいけれど。(ちなみにわたしの夫は年下です。‥興味ないって?)
わたしは、いちご泥棒のトートバックを持っていて、見知らぬ人から話しかけられたことが何度かある。
バス停でその柄のブラウスを着た老齢の女性を見かけ、わたしから話しかけたこともある。
「わたしのバックと同じ、いちご泥棒ですね?」
「え、あら、それ、作ったの?」
その女性はわたしのバックを見て、尋ねた。
「わたし、作れませんよ。お店で買ったんです」
と、答えたら、
「わたしはね、生地を取り寄せて、自分で縫ったの」
と、おっしゃった。黒いシックなボタンが並んでて、素敵なブラウスだった。
裁縫ができる人って、想像力に丈、知的な気がする。わたしなんて、取れたボタンを付けなおすだけで頭の中がもやもやしてしまう。
ほっそりした、白髪のショートカットの女性は颯爽とした雰囲気で格好良かった。イギリスに住んでいらっしゃったことがあるのかもしれない。
尋ねてみる間もなく、バスが来て、その女性は去ってしまった。
何だか、映画のワンシーンみたいで、印象的な女性でした。
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