本当にある怖い歯医者

エッセイ

 高校の同級生に、歯科クリニックを開業した人がいる。

 同級生曰く、

 「ユニットやレセコン、レントゲンを揃えたら、借金が一億円超えちゃった。わたし、一生、仕事を辞められない」

 とのこと。

 「その点、心療クリニックっていいわよねぇ。机と椅子、後は本棚があればOKだもの」

 とも。借金を抱えて、ちょっと僻んでしまった(?)のかなあ。まあ、ドクターにはドクターの悩みがあるようだ。

 わたしは、数年前、近所にできたばかりのスタイリッシュな歯科クリニックに通っていたことがある。

 オシャレで、キッズルームもあり、壁紙は空の模様で、扉はピンク。子ども受けしそう。(でも、歯医者だから、子どもは喜んでくることはないだろう)完全個室で治療を受けられ、治療用チェアーに座ると目の前には小さな日本庭園が見えた。聞いたところによると、若い歯科医の夫婦でこのクリニックを始められたそう。

 通っているうちに、

 「うちは建物も凝ったばっかりに、借金が二億円を超えているんですよ」

 という愚痴を男性の先生から聞いた。

 そして、ホワイトニングやマウスピース、歯周病予防のために就寝前に舐める薬などを勧められるがまま定期的に購入し(だって、歯は大事だもの)、虫歯を2本抜かれた。

 しかし、

 「次回も一本虫歯を抜く必要があります。今度は私費で治療しましょう。20万円を用意して来院ください」

 と、言われた時、

 「ここは危険だ、トンズラしなきゃ!」

 という恐怖心が突如、わいた。

 (この歯科クリニックは、少しずつ歯を抜いて、わたしを総入れ歯にしたいのではないか?そして、数年置きに「合わなくなっている」と言っては作り直し、そのたびに100万円ほどせしめようと目論んでいるのではないか?)

 という、妄想に取り憑かれたのだ。わたしは、そういう自分の「勘」というものを、結構大切にしている。(外れることの方が多いけれどね)

 今は普通の、昔ながらの佇まいの歯医者に通っていている。

 窓口で、

 「本日の治療費は320円です」

 などと言われるたびに、すごくホッとするようになった。

 

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